糸満市の黒糖職人・前田さんの黒糖作りへの情熱

かつては県内各地に存在した黒糖工場も白砂糖の需要増加などで1970年代から減少し、現在は8工場のみです。

工場の減少と共に黒糖職人も減り、その数は実態がないほど少なくなっていますが、糸満市新垣に工房も持つ前田英章さん(69)歳は、サトウキビ栽培から黒糖製造まで手掛ける黒糖職人の1人で、完成した黒糖は「珊瑚黒糖」として販売します。

前田さんは「いくら技術があってもこの味は出せない。心を込めた料理だよ」と目を細めます。製造工程も、搾汁機でサトウキビを搾り、釜で煮詰め、固めるという昔ながらの方法で、「『畑』ではなく、サトウキビ一本一本と向き合わなければ」と語ります。

また、前田さんの祖父は「シーゾー」と呼ばれる熟練の技術を持つ黒糖職人で、祖父の姿を思い出して黒糖作りも試行錯誤を重ねました。

「サトウキビは沖縄の伝統的な産業だが、決して華やかではないと」と語り、黒糖の持つ栄養素などから、健康資源としての可能性に期待する前田さん。

後継者育成に積極的に取り組んでおり、「若い人には沖縄の産業発展につながる働きをしてほしい。でもあと20年は工房に立つ」と、黒糖作りへの情熱はまだまだ冷めません。
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